キクイムシとは、春から夏にかけて成虫が発生する害虫です。体長は1~7mmほどで体色は黒、楕円形の小さな甲虫です。
聞きなれない方も多いかもしれませんが、キクイムシは昔から日本人が被害にあってきた害虫の1つ。キクイムシはクローゼットや家具を食い荒らし、穴だらけのボロボロにしてしまうのです。防虫技術のない昔でこそどうしようもない虫でしたが、現代では適切な方法で退治が可能です。
そこで本記事ではキクイムシの発生原因から駆除方法、予防方法まで詳しく解説します。これから家を建てる方や引っ越す方も、キクイムシについて知り快適な生活を実現してください。
【目次】好きなところから見れます▼
キクイムシとは?生態や特徴、発生原因、種類など
シロアリやダニなどの一般的な害虫とは異なり、「キクイムシ」という名前は聞いたことがない方も多いでしょう。
被害を予防するためにも、まずはそんなキクイムシの生態や、キクイムシがどのような場所に発生するのかを見ていきましょう。
キクイムシの生息環境や好む場所を理解していれば、事前に被害を防ぐことも可能です。
キクイムシの生態・特徴
キクイムシは体長1cm未満の小さな虫です。
成虫は全身がこげ茶色から黒い体色に覆われており、上から見ると楕円形の姿をしています。成虫は5月から8月が主な活動時期で、この期間に産卵します。
キクイムシは木の中に卵管を差し込み、産み付けるのが特徴です。そのため、家具やフローリングの中に卵が産みつけられることもしばしば。そうなると10日ほどで孵化した幼虫が周囲の木材を食い進み、家具がボロボロになってしまいます。
幼虫は体長3~4mmで、頭が茶色く体が白いイモムシのような姿をしています。幼虫として木を食べながら暮らすのは、主に9月から4月頃です。一生涯で50個ほどの卵を産むキクイムシは、繁殖力も高いため一度発生したら早急に駆除する必要があります。
キクイムシの発生原因
キクイムシが家の中で見られた場合、元々キクイムシの卵が付いていた家具を購入してしまった可能性が高いです。
キクイムシはその名の通り、木を食べて育つ甲虫です。しかし、屋外から屋内に侵入してくることは少ないとされています。そのため、多くの場合が購入した家具に元々キクイムシが付いていた、というケースなのです。
ちなみにキクイムシはケヤキ、ラワン、ナラ、タモ、シオジ、キリなどの木を好んで食べます。
反対に、家の建設に使われるスギやヒノキといった針葉樹は好みません。キクイムシが好きな広葉樹は家具に使われることが多いため注意が必要です。
また家具にもニスや防腐剤が塗布されていればキクイムシを予防できますが、天然木や無垢材にはキクイムシが付くリスクがあります。
キクイムシの種類
キクイムシと一言で言っても、その種類は実に多種多様です。
キクイムシは国内でも300種類以上いるため、駆除するにはどのキクイムシなのか特定したうえで、それぞれに合った駆除方法を実践する必要があります。
中でも、部屋の中でよく発見されるのが「ヒラタキクイムシ」という種類です。しかし発生原因となった家具によっては全く異なる虫かもしれません。
詳しく知りたい方は、以下の記事でキクイムシの種類について詳しく解説しています。
シロアリ・コクヌストモドキとの違いや見分け方
自宅に発生する害虫の代表格が、シロアリです。また、キクイムシかと思いきやコクヌストモドキだった、ということもしばしば。
コクヌストモドキとは、穀物から発生する害虫です。刺したり家具を食べるといった直接的な被害はないものの、不快害虫として知られます。
ここからは、これらの害虫とキクイムシの見分け方を見ていきましょう。
キクイムシとシロアリの違いや見分け方
まずはシロアリとキクイムシの違いと見分け方を見ていきましょう。
虫を直接見かけた場合、その体を観察します。キクイムシは甲虫なので、上から見るとカブトムシのように固く閉じた羽があるのが分かります。
反面、シロアリは羽がある場合とない場合があります。羽がなく、一般的なアリと同じような姿をしていたらシロアリの可能性が高いです。また、蚊のような薄い羽根が大量に落ちていたり、薄い羽根を付けた虫を見た場合もシロアリの可能性があります。
さらにキクイムシの被害は木材に小さな穴がぽつぽつと空くのに対し、シロアリは木材の内側がスカスカになります。
キクイムシとコクヌストモドキの違いや見分け方
では次にキクイムシとコクヌストモドキの見分け方を見ていきましょう。
パッと見では、どちらも非常に大きさや姿が似ています。しかしよく見ると、触覚の先にある節の数が異なります。キクイムシは触角の先についている節が2つ。
一方、コクヌストモドキは3つの節を触覚に持っています。他にも違いはあるものの、この見分け方が最も分かりやすいでしょう。
虫を間近で見たくないという方は、フローリングやテーブルなどの木材に小さな穴が開いていないか確かめてみましょう。木材に穴を空けて食べるのはキクイムシの特徴です。コクヌストモドキが木を食い破ることはありません。
キクイムシによる被害。人体への影響はある?
キクイムシは見た目が黒くつやがあることもあり、「怖い」と思う方も多いでしょう。結論からいうと、キクイムシが人を噛んで吸血したりすることはありません。しかし、家具をボロボロにしてしまうのは事実です。
そこでここからは、キクイムシが及ぼす被害について紹介します。キクイムシが発生すると具体的にどのようになってしまうのか、また人体に影響はあるのかチェックしてください。
被害について詳しく知ったうえで、適切な駆除方法を考えましょう。
キクイムシ被害のサイン
キクイムシの被害のサインはいくつかあります。
1つめは、家の中に細かい木くずが落ちていること。キクイムシは木製の家具やテーブルに表面から食い付き、そのまま食い進めます。そのため、キクイムシがいたところの床には細かい木くずが落ちていることがしばしばあるのです。
2つめは、「ガリガリ」と音がする、という状況です。キクイムシの顎は丈夫で、木を食べる際にガリガリとわずかな音を発します。寝ているときなどに、こうした音が聞こえたら注意が必要です。
3つめは、木材に穴が開いている状態です。キクイムシが家の中で飛んでいるのを見つける以外にも、こうした被害の見つけ方があります。
キクイムシによる被害
キクイムシが発生した家具は、表面にポツポツと穴が開くだけでなく内側も食い進められてボロボロになってしまいます。
1匹だけであればまだしも、中で繁殖されたら急速に家具がボロボロになっていくでしょう。キクイムシの寿命は長くても1ヶ月と少しとされていますが、その生涯で50個以上の卵を産みます。
卵は10日前後で孵化し、幼虫のときから成虫と同じく木をバリバリと食べ進めます。そのため、キクイムシのせいで家具の耐久性が下がってしまうのは、大げさな話ではないのです。決して放置せず、早急な対策が必要です。
キクイムシによる人体への影響はある?
キクイムシは、人体に直接悪影響を及ぼす虫ではありません。
毒性もなく、比較的安全な虫といえます。あくまで木を主食としているため、人間を攻撃したり吸血したりすることはありません。また、ダニのように死骸がアレルギーの原因物質となることもないでしょう。
強いて言えば、キクイムシが大量発生した周辺では木のくずが散るため、木くずで周辺がほこりっぽく感じられることくらいです。
キクイムシを駆除する3つの方法
キクイムシを駆除する方法は主に以下のとおり3種類あります。
・スプレータイプの駆除剤を使う
・燻煙タイプの殺虫剤を使う
・専門業者に依頼する
市販されている殺虫剤を使うのは簡単ですが、木の奥に潜むキクイムシをすべて駆除するのは難しい場合があります。被害状況に合わせて最適な駆除方法を選択しましょう。
駆除方法①:スプレータイプの殺虫剤を散布し自分で駆除する
まずはスプレータイプの殺虫剤を散布し、自分で駆除する方法です。
殺虫剤を選ぶ際は、キクイムシ用のものを選びましょう。ゴキブリやハエ用の殺虫剤では、十分な効果が得られません。
なぜなら、キクイムシは基本的に木材の中で生活しています。そのため、一般的なスプレータイプの殺虫剤ではキクイムシが潜む穴の奥まで薬剤が届かない可能性があるのです。
キクイムシ用の殺虫剤を購入すれば、細いノズルをキクイムシのいる穴の入り口にさし、奥までしっかりとスプレーできます。成分としては哺乳類にとって安全なピレスロイド系のものがおすすめです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
駆除方法②:燻煙タイプの殺虫剤を使用し自分で駆除する
不特定多数の場所にキクイムシの被害がある場合は、燻煙タイプの殺虫剤もおすすめです。
燻煙タイプとは部屋を閉め切り、内側を殺虫成分のある煙で燻すことでキクイムシを駆除するタイプの殺虫剤です。
部屋全体に殺虫成分が行き渡るため広い範囲に効果が期待できる点が特長。しかし、押し入れの奥や家具の奥深くに潜り込んでいるキクイムシには届かない可能性もあります。また、ペットや魚にとって燻煙タイプの殺虫剤は毒になるため、注意しましょう。
駆除方法③:専門業者に依頼する
複数の場所でキクイムシの被害が見られ、自分ではどうしようもない場合は専門業者に依頼しましょう。
専門業者であればキクイムシの種類や発生場所をしっかりと特定し、家具の奥に住むキクイムシもしっかりと駆除してくれるでしょう。自分では駆除しにくい卵や幼虫においても同様です。
家の被害状況に合わせ、適切な駆除をしてくれるため再発予防にもおすすめです。キクイムシの駆除を請け負っている業者は複数あります。
ぜひ以下の記事から、自分に合った駆除業者をお選びください。
キクイムシの発生予防対策3選
キクイムシの発生を予防するには、主に以下の3つの方法があります。
・殺虫剤を散布する
・塗料・防腐剤を塗る
・防虫処理が施された木材を使用する
ちなみにキクイムシはでんぷん質(栄養分)の多い新鮮な木材を好む傾向にあります。そのため、発生する家の8割が新築というデータもあります。
新築の家へ引っ越す場合は、できるだけ塗料や防腐剤の塗ってある家具を選びましょう。
予防方法①:殺虫剤を散布する
1つめの予防方法は、殺虫剤を散布する方法です。
キクイムシが発生しそうなタンスや机、いすなどの表面にエアゾール式の殺虫剤を振りまきましょう。殺虫剤のかかった木の表面にはキクイムシがつかないほか、こうした木材は産卵もされません。
成虫が産卵する5~8月頃にかけて、定期的に殺虫剤を使えば産卵を予防できます。ただし、表面の殺虫剤はすでに内部へ入ってしまったキクイムシには効果がありません。また食卓に吹きかける際やお子さんのいる家庭では殺虫剤の安全性にも注意しましょう。
予防方法②:塗料・防腐剤を塗る
天然木や無垢材の家具がある場合は、塗料や防腐剤を塗りましょう。たとえばキクイムシが好むのは桐ダンスです。
このほか広葉樹でできたテーブルやいす、フローリングなどが被害に遭いやすい傾向にあります。
一度ニスや塗料、防腐剤を塗ってしまえばその後キクイムシに食われる心配はありません。そのため、早めの対応をおすすめします。
ただし、すでにキクイムシの被害に遭っている場合は塗料を塗ることで内側にキクイムシを閉じ込めてしまうことになります。すると内部で繁殖し続ける可能性もあるので注意してください。
予防方法③:防虫処理が施された木材を使用する
塗料や防腐剤が塗られていなくても、防虫処理さえ施されていればキクイムシの予防は可能です。
家具を購入する際は特に、「防虫処理済」といった記載があるかをよく確認しましょう。天然木や無垢材の家具でも、防虫処理がしてあるため虫食いの心配がないものは多数あります。
こうした家具をえらえば、木そのものの素材感や質感を損なうことなくキクイムシの予防が可能です。注文住宅を建てる際も、防虫処理はしっかりと行ってもらうことをおすすめします。
まとめ
キクイムシの生態から駆除方法までを解説しました。
キクイムシは人間に直接攻撃こそしてこないものの、大切な家具や家財を食い荒らしてしまう害虫です。
自分でキクイムシを駆除するには穴に直接スプレーする方法がもっともおすすめです。
しかし、被害範囲が多い場合やどこに潜んでいるか分からない場合は、害虫駆除業者に依頼して確実に駆除してもらうのが良いでしょう。
またキクイムシは、家に入ってこないよう予防することが最も大切です。
家具を購入する際は塗料や防腐剤、防虫加工の施されたものを選ぶことをおすすめします。
キクイムシの生態について知り、快適な生活を送りましょう。