2020年末、電気代の高騰が話題となりました。SNS上では、「電気代が10万円をこえる」「電気料金が5倍になる」などの声もあがっており、不安を感じている人も多いことと思います。
電気代高騰の影響を正しく知り、対処していくためには、電気代の仕組みや、電気代高騰の背景を理解する必要があります。
本稿では、JEPX(日本卸電力取引所)の仕組み、電気代高騰の背景、電気代の仕組みなどの解説を通して、電気料金値上げの原因を解説していきます。
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JEPXとは?わかりやすく解説
2020年末に話題となった電気代の高騰の原因を知るためには、まずJEPXについて理解する必要があります。
JEPXとは日本卸電力取引所のことです。電力自由化に伴い、電気売買のための取引所として設立されました。
電力自由化以前は、自社で発電所を持っている大手電力会社が、燃料調達、発電、送電、小売まで一貫して行っていました。
電力自由化以降、発電設備を持たない新電力会社が多数参入しましたが、これらの会社は自社で発電できないため、発電された電気を調達し、販売する必要があります。
この際の調達先がJEPX(日本卸電力取引所)です。
JEPXの価格が高騰した原因
2020年末、電気代の高騰が話題となりました。ここでの「高騰」とは、主にJEPXでの取引価格(=市場価格)の高騰を指しています。
簡単に言えば、「市場価格が上がる→新電力の電気調達価格が上がる→電気代が値上げされる」という流れによって、影響を受ける消費者もいることから、大きな話題になっているのです。
では、なぜJEPXの価格が高騰しているのでしょうか。主な原因は、以下の2つです。
・天然ガスの輸入に問題が起きている(供給の減少)
・電力の消費量が増加している(需要の増加)
多くのモノの価格は、需要と供給のバランスによって決まります。需要が増加する一方で供給が減少したことで、価格が高騰したのです。
高騰した原因1. 天然ガスの値上げ
JEPX(日本卸電力取引所)では、全国で発電された電気を集めて売買しています。
売買される電気の価格は、発電コストによって大きく左右されるため、発電に利用する燃料の価格にも影響を受けます。
現在、日本の電力供給シェアは、火力発電が約3分の2を占めています。
火力発電には、原油や天然ガスなどの燃料を用いますが、最近ではエコの観点から天然ガスの利用が増加しています。
つまり、日本の電力価格は、天然ガスの国際価格の影響を非常に受けやすいということです。2020年末から、天然ガスの供給が世界規模で不足しています。
主な理由として、以下のような問題が挙げられます。
・中国が経済の復調に伴い、天然ガスの輸入を増加した
・天然ガス産出国であるオーストラリア、マレーシア、カタールなどで、生産設備のトラブルが起こった
・パナマ運河での通関手続きが遅延し、天然ガスの流通が混乱している
日本では、天然ガスをタンクに貯蔵していますが、タンクでの貯蔵では徐々に気化する性質があり、長期保存が困難です。
天然ガスの備蓄が少なく、供給も滞ったために、JEPXでの高騰を招いたのです。
高騰した原因2. 寒波による使用量の増加
モノの価格を決めるのは、「需要」と「供給」の二つの要素です。
電力価格も、燃料を仕入れ、発電・送電する「供給」と、電力を消費する「需要」のバランスで決まります。
2020年の年末から年始にかけて、数年に一度といわれるレベルの寒波によって、電力需要が急増しました。大雪による立ち往生が大々的に報道されたことも記憶に新しいです。
寒ければ、暖房器具の使用が増え、電力消費量も増加します。
つまり、天然ガスの問題による供給の困難・減少に加えて、電力の需要の増加が起こったことによって、電気代の高騰に拍車がかかっているのです。
なぜ電気料金は値上げした?電気料金の仕組みから解説
これまで書いてきた通り、天然ガスの不足と寒波の影響によって電気の市場価格が高騰しました。
燃料代が上がれば発電コストも上がり、その上昇分が電気代に転嫁されることは容易に想像できるでしょう。また、需要の増加に供給が追い付かなければ、これも価格上昇につながります。
では、より消費者目線で「なぜ電気料金が値上げしたのか?」を考えてみるとどうでしょうか。電気料金の仕組みから考えると、その理由がよく分かります。
電気料金の仕組み
電気料金の内訳を詳細にみると、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金によって構成されています。
基本料金は、皆さんにも馴染みがあるでしょう。契約電力や契約容量によって決まる固定料金です。
電力量料金は「従量料金」ともいわれる料金で、電力の使用量に応じて計算される料金です。
燃料調整額とは、天然ガスや原油など、発電に必要な燃料価格の変動を調整する項目です。燃料価格が安い時期はマイナスに計算されて電気代が安くなり、燃料価格が高い時期はプラスに計算されて電気代が高くなります。
最後に、再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、簡単に言えば、再生可能エネルギーの導入促進のための費用を、消費者から少しずつ集めるものです。
電気料金値上げの原因
電気料金の仕組みで挙げた4つの項目のうち、電気料金値上げの大きな原因となるのが電力量料金と燃料調整費です。
電気料金のプランに市場連動型というものがありますが、市場連動型はさらに「従量料金型」と「燃料調整費型」の二種類に分けられます。
従量料金型は、従量料金(電力量料金)がJEPXの市場価格に連動するタイプです。このため、JEPXの価格が高騰すれば、電気料金も大幅に値上げされます。
次に、燃料調整費型とは、燃料費の高騰によるJEPX価格の大幅に変動した際、電気料金の計算式に調達調整費という項目を加え、電気料金を決めるタイプです。
調達調整費とは、燃料の調達価格の上昇を転嫁する項目ですから、今回のように天然ガスの供給不足がJEPX価格に反映されている場合、電気料金値上げの原因となります。
JEPX(電力市場)の価格高騰の影響を受ける人
最後に、JEPX(日本卸電力取引所)の価格高騰の影響を受ける人をまとめていきます。
大まかにいえば、以下の2つに該当している人が価格高騰の影響を受ける可能性が高いです。
・新電力会社と契約している
・市場連動型プランを契約している
市場連動型プランを契約している人は、全体の約1.86%(約80万件)とされ、価格高騰の影響を受ける人もごく一部に限られます。
しかし、新電力を利用している人の中には、知らず知らずのうちに市場連動型プランを選んでいる人もいます。
価格高騰の恐れがある会社では、何らかの対応をアナウンスしているため、利用状況を確認することをおすすめします。
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