ツツガムシを駆除したい
ツツガムシに刺されたかもしれない
暖かくなってくるとキャンプやハイキングなど、屋外でのレジャーを検討する人も多いと思います。
自然の中で過ごすのは気持ちいですし、リフレッシュできますよね。
しかし屋外のレジャーや農作業につきものなのが、虫のお悩みです。
虫の中にはツツガムシのように感染症を媒介するものもいるので、なんとか駆除できないかと考えてしまいますよね。
今回はツツガムシ病の原因にもなるツツガムシの生態や、刺された場合の症状、駆除方法についてご紹介していきます。
ツツガムシとは?生態や発生時期・種類など解説
ツツガムシの駆除方法の前に、まずはツツガムシの生態や種類について解説していきます。
ツツガムシとはダニの一種で、ダニ目ツツガムシ科という分類をされている虫です。
ツツガムシの幼虫は人間や動物を刺して体液を吸い、刺された場合は痛みやかゆみはほとんどありませんが、特徴的な跡が残ります。
日本全国に広く生息しているので、どの地域にお住まいの人でもツツガムシに刺されてしまう可能性があります。
ツツガムシの生態や発生時期:マダニとの違いは?
ツツガムシは卵から孵化して幼虫、若虫を経て成虫になります。幼虫は6本、若虫・成虫では8本の足を持っています。
幼虫のときだけ動物や人間の体液を吸うのが特徴で、若虫や成虫になると昆虫の卵などをエサにします。
幼虫の体長は0.2mm~0.3mmと小さいので、肉眼で見つけるのは困難な大きさです。
ツツガムシとよく似た害虫にマダニがいますが、マダニは体長が1mm~1.5mmとツツガムシに比べて大きいのが特徴です。
ツツガムシの生息場所
ツツガムシは主に東北から九州まで、日本全国に広く生息しています。
北海道や沖縄では比較的少ないですが、被害が発生したケースもあります。
山林や畑、河川敷といった自然の豊かな場所で多く見られ、家の中で繁殖することは基本的にはありません。
これはツツガムシは土の中に卵を産む習性があり、自然の中のほうがエサも取りやすいためです。
ただし、ツツガムシが衣服に付いたことに気づかず屋内に持ち込んでしまったり、ツツガムシに寄生されたネズミが室内に入り込むなどして、ツツガムシが運び込まれてしまう可能性は考えられます。
ツツガムシの種類
一口にツツガムシといっても、実はいろいろな種類がいます。その数はなんと100種以上。
その中でも代表的なのが、アカツツガムシ、フトゲツツガムシ、タテツツガムシの3種です。それぞれの特徴について整理しましょう。
アカツツガムシ
アカツツガムシは若虫や成虫は赤い身体、幼虫はオレンジ色をしていて、体にくびれがあるのが特徴です。
体長は成虫では1mm程度で、幼虫はさらに小さく1mm以下の大きさです。
主な生息地域は秋田県、山形県、新潟県などで、春から初夏にかけて主に河川敷で発生します。
日本以外にも東南アジアや台湾、中国の南部にも分布していることが知られています。
フトゲツツガムシ
フトゲツツガムシは顕微鏡で観察すると太い毛が生えているような見た目をしています。
全国に広く分布していますが、特に東北、北陸、山陰といった地域で多く見られます。
成虫は1mmくらいの大きさの桃色、幼虫はだいだい色やうすい赤色をしています。
発生時期は春、初夏、秋、初冬と長期間に渡り、山林にも平野部にも生息しているのが特徴です。
タテツツガムシ
タテツツガムシは成虫の体長が1mmほどの大きさで、中央がくびれた桃色の体に、短い毛が生えているのが特徴です。
幼虫は薄い赤色の円形です。
比較的暖かい地域に生息しており、関東、東海地方や九州で多く見られます。
秋から冬にかけて発生し、山間部が主な生息地域となっています。
日本国外ではタイでの発生が記録されています。
ツツガムシに刺されるとどうなる?
ツツガムシは二の腕や脇腹など、体の軟らかい場所を刺し、刺されると特徴的な跡が残りますが、痛みやかゆみを感じることはほとんどありません。
刺し口部分は黒くかさぶたのように固くなり、その周りが赤みを帯びます。
マダニに刺された場合も赤い跡が残りますが、マダニはツツガムシに比べて大きく吸着しているのが肉眼でも確認できるのが大な違いです。
ツツガムシが動物や人間を刺すのは幼虫のときだけで、刺されても害はないことも多いです。
しかし、場合によってはツツガムシ病という感染症にかかる場合があります。
ツツガムシ病とは
ツツガムシ病とは、ツツガムシ病リケッチアという病原体を持ったツツガムシに刺されることによってかかる感染症です。
感染症法では4類感染症に指定されています。
動物から人への感染が起こる感染症ではありますが、人から人への感染は起こらないとされています。
ツツガムシ病の原因となるツツガムシは雑木林や河川敷など草が生い茂っている場所に生息しているので、レジャーなどで自然の多い所に行く場合は注意が必要です。
ツツガムシ病の発症原因
ツツガムシ病はリケッチアという病原体を持ったツツガムシに刺され、病原体が体内に移ることによって発症します。
病原体を持っていないツツガムシもいるので、刺されたら必ず感染するというわけではありません。
国立感染症研究所では、リケッチアを媒介するツツガムシの0.1~3%が病原体を持っていると解説しています(国立感染症研究所公式ホームページ参照)。
割合として見るとそれほど高い確率ではないように思えますが、日本では毎年約400~500件の感染報告があり、中には死者も出ています。
ツツガムシ病:病原体・症状について
ツツガムシ病に感染した場合、5~14日の潜伏期間の後、次のような症状が現れます。
・38~40℃近い発熱
・頭痛、悪寒、倦怠感、食欲不振
・全身の発疹
・目の充血、リンパ節の腫れ
重症化すると肺炎や心不全を引き起こし、最悪の場合は死に至る可能性もある危険な感染症です。
ツツガムシに刺されると刺し口の中央は黒くかさぶたのような跡ができ、その周りの皮膚が赤みを帯びた状態になります。
腰やわきの下など、見つけにくい場所を刺されてしまうことも多く、注意が必要です。
ツツガムシ病の治療法
ツツガムシ病にかかってしまったら、速やかに治療を始めることが大切です。
重症化してしまうと命にかかわる感染症なので、疑わしい症状や刺された跡が見られる場合は自己判断せず、必ず病院で診察を受けましょう。
治療にはテトラサイクリンという、ツツガムシ病に有効な抗生物質を使用します。
発熱や脱水への対策として、点滴も併用しながらの治療となります。
ツツガムシは駆除できる?
感染症の原因にもなるツツガムシ。
なんとか駆除できないかと思いますよね。
ツツガムシは成虫で1mm、幼虫では0.2~0.3mmと非常に小さく、肉眼で確認するのは困難です。
加えて基本的に屋外に生息しているため、完全に駆除するのは難しいといった事情もあります。
よって、駆除するというよりは刺されないような予防をするとことが必要になってきます。
屋内には生息しないツツガムシですが、ツツガムシに刺されたネズミや野鳥が家の中に入り込んでしまうというケースは考えられます。
ツツガムシ病に限らず、ネズミは感染症を媒介する原因になることがあります。
ネズミの発生がみられる場合はネズミの駆除を検討しても良いでしょう。
ツツガムシ病の予防対策5選!
屋外に生息するツツガムシを、完全に駆除するのは難しいです。
ツツガムシ病にかからないためには、ツツガムシを駆除するというよりも、刺されないための予防が大切になります。
では、具体的にどんな対策を取れば良いのでしょうか。ツツガムシ病を予防するための対策を5つご紹介します。
・予防対策①肌を露出しない
・予防対策②地面に直接座らない
・予防対策③虫除けを使用する
・予防対策④帰宅後はシャワーで洗い流す
・予防対策⑤外出時に着ていた衣類をすぐに洗濯する
駆除はできなくても少しの心がけで感染を防ぐことができるので、レジャーの前に確認しておきましょう。
予防対策①肌を露出しない
ツツガムシに刺されるのを防ぐためには、肌を露出しないのが有効な対策になります。
ツツガムシが生息していそうな山間部などに行く際には長袖や長ズボンを着用し、素肌が晒される範囲をできるだけ少なくしましょう。
袖口がゴムで絞れるような衣服を着用したり、カバーなどを使って袖口からの侵入を防ぐのも効果的な方法です。
予防対策②地面に直接座らない
ツツガムシは山間部や雑木林の地表に生息していることが多いです。
地面や草むらに直接座ってしまうと、ツツガムシが寄ってきて気づかないうちに刺されてしまう可能性があります。
レジャーシートなどを使って、地面に直接座るのは避けましょう。
同様の理由で、上着やタオルなど肌に触れるものは地面に直置きしないようにしましょう。
予防対策③虫除けを使用する
ツツガムシに対して有効な成分を含む虫除け剤を使うのも有効な予防対策です。
退治するのは難しくても、寄せ付けない効果は期待できます。
ディートという成分がツツガムシに対して有効な成分となっているので、用途に合った虫除け剤を使うと良いでしょう。
なお、ディートが30%以上含まれている虫除け剤は12歳未満には使用できず、ディート含有量が少ない虫除け剤でも6ヶ月未満の乳児には使用しないこととされています。
予防対策④帰宅後はシャワーで洗い流す
山間部や田畑など、ツツガムシが生息していそうな場所から帰宅したら、速やかにシャワーで体を洗い流しましょう。
ツツガムシが持つ病原体が人体に移行するまで6時間程度かかるとされています。
万が一ツツガムシに刺された場合でも、病原体が体に取り込まれる前にシャワーなどで洗い流してしまえば、ツツガムシ病にかかるのを防げる可能性があります。
予防対策⑤外出時に着ていた衣類をすぐに洗濯する
外出時に着ていた衣類は放置せず、できるだけ早く着替えて洗濯しましょう。
自然の多い屋外を歩き回った後の衣類には、ツツガムシが付着していることも考えられます。
帰宅後も着替えずにいたり洗濯せずに置いておくと、自宅の中にツツガムシを招き入れる可能性があります。外出時の衣類のままで家の中を歩き回るのは避けたほうが良いでしょう。
犬・猫にも被害はある?
ツツガムシは人間だけでなく、犬や猫といったペットが刺されたというケースもあります。
犬や猫が刺された場合は皮膚に炎症が起きたり、痒みが出ることがありますが、無症状で感染に気付かないことも多いです。
ペットに症状が出なくても、ペットに吸着していたツツガムシが家の中に持ち込まれてしまったり、人間に感染してしまう可能性もあります。
シャンプーなどで対策を取ったり、ペットに疑わしい症状がある場合は動物病院を受診しましょう。
まとめ
ツツガムシの駆除や生態についてご紹介しました。
ツツガムシは目視では確認できないほど小さく屋外に生息しているので、完全に駆除するのは難しいです。
駆除するというよりは、刺されないように予防するのが現実的な手段となります。
ツツガムシが生息していそうな雑木林や山間部に行くときは、肌が露出しないように長袖長ズボンを着用し、地面に直接座ったり、肌に触れる衣類を地面に置くことは避けましょう。
ツツガムシに有効なディートを含む虫除け剤を使うのもよいです。
外から帰ったら速やかに着替えてシャワーを浴びることで、家の中にツツガムシを持ち込むのを避けることができます。
万が一発熱などの症状が出た場合はツツガムシ病にかかっている可能性があるため、必ず病院で診断を受けてください。