太陽光発電は、今やどこでも見られる身近なものとなりました。新築戸建ての約2割に、太陽光発電システムが導入されています。
今回は、そんな太陽光発電の「発電効率」について説明していきます。自宅に設置を検討している方なら、よく目にする言葉ですよね。しかし、カタログや見積もりの数値だけ見ても、どのように活用すればいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、パネルのメーカーによって発電効率が変わる理由や、発電効率をアップさせる方法が分かります。太陽光以外の再生可能エネルギーで発電した場合の発電効率比較についても紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
太陽光の発電効率とは?
太陽電池が、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率のことを「発電効率」、または「変換効率」と呼んでいます。面積と光量が同じ場合、発電効率が高いソーラーパネルほど、発電量が多いといえます。
例えば、「容量が3kWの太陽光発電システムを自宅に導入したい。」と考えている場合、発電効率が高いパネルほど、パネルの面積が少なくて済みます。狭い屋根でもたくさんの電気を生み出せるというわけです。しかし、発電効率が低いパネルは値段が安いことが多いため、費用とのバランスも重要です。
発電効率は自宅に合った太陽光パネルを選択するための、大きな要素だといえるでしょう。
変換効率の計算式は?素材ごとの変換効率も紹介!
では、変換効率とはどのように計算されているのでしょうか?また、同じ太陽電池でも、どうして変換効率に違いが生まれるのでしょうか?
ここからは、変換効率の求め方と、ソーラーパネルの素材による変換効率の違いを解説していきます。素材別の特徴と、どんな場面に向いているかも紹介するので、参考にしてみてください。
モジュールの発電効率
「モジュール」とは、太陽電池をパネル状にしたもので、ソーラーパネルとも呼ばれ、メーカーではモジュール1枚ごとに販売されています。家庭に太陽光発電システムを導入する場合には、モジュールの変換効率を「発電効率」として考えてください。
変換効率の計算式は以下の通りです。
モジュール変換効率=(モジュール公称最大出力(W)×100) ÷ (モジュール面積(m2) × 1000(W/m2))
セルの発電効率
太陽電池モジュールは、「セル」という部品を繋げて1枚のパネルになっています。セルの変換効率は、導線を通る際のロスがでないため、モジュールよりも高い値となります。メーカーの研究成果を比較する場合などに使われることが多いです。
計算式は以下の通りです。
セル変換効率=出力電気エネルギー÷太陽光エネルギー×100
素材ごとの変換効率
太陽電池は「半導体」を使って作られますが、その素材はさまざま。ソーラーパネルに使用される素材によって、変換効率は異なります。
ここからは、素材ごとの変換効率について解説します。それぞれの特徴も紹介しますので、比較してみてください。
シリコン系太陽電池
現在主流となっているのがシリコン系です。セルが1つの結晶からできているものを「単結晶シリコン」といいます。変換効率は20%前後と高く、設置場所が限られる家庭用に向いています。
また、セルを小さなシリコン結晶を集めて作るのが「多結晶シリコン」です。単結晶シリコンよりコストが安いのが特徴ですが、変換効率は15%前後と下がります。広い設置面積を確保できる場合にはおすすめです。
さらに「アモルファスシリコン」は、高温に強い素材です。単結晶シリコンと組み合わせて使用すると、高い発電効率を保ちながら真夏の発電量低下を軽減できます。
化合物系太陽電池
CIS太陽電池とも呼ばれます。銅(Cu)・インジウム・セレンの3種類の元素を組み合わせて作られた「化合物半導体」からできています。変換効率は15%前後と、多結晶シリコンと同程度です
シリコン系に比べて生産コストが低く、温度上昇に強いため、設置面積が広い産業用太陽光発電や、屋根が広い住宅に設置する場合におすすめできます。
有機物系太陽電池
シリコンや化合物のような無機物ではなく、有機物を使った半導体で作られる太陽電池です。変換効率は高くなく、耐久性が低いため、まだ実用化には至っていません。生産コストが低くフレキシブルなため、今後の研究開発が期待されます。
「有機薄膜太陽電池」は、原材料をインクジェットプリンターで印刷するように塗布するだけで製造可能で変換効率は10%程度です。また、「色素増感太陽電池」は、色素が光を吸収すると電子を放出する特性を使って発電し、実験室レベルの変換効率は12%程度です。
太陽光発電の発電効率は悪い?他の再エネの変換効率と比較!
太陽光発電の発電効率について解説しましたが、「最高で20%くらいなら、効率が悪いのでは?」と思われた方もいるかもしれませんね。
ここからは、水力・風力・バイオマスといった他の再生可能エネルギーと発電効率を比較していきます。それぞれの特徴や、どんなところで使われているかも紹介するので、太陽光発電と比べてみてください。
太陽光発電の発電効率|交換効率(発電効率)の推移も紹介
太陽光発電開発の歴史は1970年代から始まっています。日本では、パナソニック・京セラ・シャープなどが1975年に研究を開始しました。
セル変換効率の推移をみると、開発当初に10%前後だったものが現在では25.6%まで向上しています。(実際のモジュールに加工するともう少し効率は下がります。)今後も、変換効率をさらにアップする研究開発が進められるでしょう。
水力発電の発電効率
水力発電は再生可能エネルギーの中でも実用化されるのが早く、日本では1945年から水力発電所が稼働し始めました。現在でも、日本の発電量の約8%を占めています。
高い場所から流れおちる水でタービンを回すという単純な仕組みで、発電効率は約80%と大変高くなっています。ただし、水を貯めるダムや、安定した水流が必要になるため、住宅街での利用は現実的ではありません。

風力発電の発電効率
風の力で風車を回し、発電するのが風力発電です。発電効率は約30~40%といわれ、太陽光発電よりも高く、洋上や山の上など、強い風が常に吹く場所に向いています。
しかし、住宅街では安定的な風の確保が難しくなります。さらに、風車が回るときに発生する騒音も問題となるため、家庭用に導入するのは厳しいでしょう。

バイオマス発電の発電効率
バイオマス発電とは、ヤシ殻や食品廃棄物、家畜排泄物などの生物資源を燃焼したりガス化したりして発電する方法です。発電効率は約20%で、太陽光発電と同程度といえます。これまで利用されていなかった廃棄物を使って発電できるので、地域環境の改善にもつながります。
ちなみに、家庭用に使用できるほど小型のバイオマス発電機は、実用化されていません。

投資として費用対効果がもっとも高いのは太陽光発電!
発電効率だけに注目すると、太陽光は他の再生可能エネルギーよりも効率が悪いように思えます。実際に運用するとなると、気になるのが費用対効果です。どの再エネも固定価格買取制度(FIT)の対象となっており、一定期間市場価格以上での電力買取が保証されます。
しかし、水力・風力・バイオマスの発電設備は、どれも初期費用が高額です。特に水力発電は、安定的な発電量を確保するためにダムの建設が必要となり、気軽に投資することは難しいでしょう。
それに比べ、太陽光発電は家庭レベルの小規模から設備が設置できます。設置場所も戸建てであれば屋根の上を利用できるので心配ありません。また、発電量が日射量から予想できるため、消費電力と売電収入の試算もある程度正確にできるのもメリットです。
投資という視点から考えると、ローリスクローリターンで運用できる太陽光はどなたにもおすすめです。
太陽光発電の発電効率が変動する要因|低下する原因も紹介!
カタログの発電効率は、もっとも条件が良い場合の値を表しています。実際の環境で発電する場合には、色々な要因が影響して、発電効率は下がるのが通常です。
ここからは、発電効率が下がる原因と、上げるための対策を紹介していきます。
変動要因1. ソーラーパネルのメーカーや素材
メーカーそれぞれに特徴があります。変換効率が高く発電量が多いもの、高温時にも発電効率が下がりにくいもの、耐久性が高く経年劣化に強いもの、性能は低いが価格が安いものなど、自分のニーズに合っているものを選びましょう。
また、パネルの素材によって、変換効率や経年劣化による出力低下率が異なります。経年劣化については、下の項目で詳しく解説します。
変動要因2. 設置場所|影による影響も
ソーラーパネルに光が当たれば当たるほど、発電量は増えます。木や電柱・近隣の建物など、日光を遮るものは大敵です。
いくら南向きの屋根でも、日当たりが悪いと意味がありません。設置場所の候補がいくつかあるなら、できるだけ長時間日光があたり、影がかからないところを選びましょう。
自宅の庭木であれば、ソーラーパネルの上にかからないように伐採すると発電効率がアップします。
変動要因3. 気温
太陽光発電は高温に弱いという特徴があります。変換効率は25度を基準に測定されていますが、温度が1度上がるごとに0.4%程度低下してしまうのです。真夏の直射日光下では、パネルの温度は70〜80度にまで上昇。発電効率が約20%低下してしまいます。
カタログに「最大出力温度係数」として出力低下率を記載しているところもあります。メーカー選定の際には、比較してみてください。
変動要因4. 積雪
天気が悪いと発電量は落ちます。さらに雪がパネルに厚く積もってしまうと、光が遮られて発電できません。ソーラーパネルの表面はガラスなので、普通の屋根よりも雪が滑り落ちやすくなっています。
また、屋根に登っての雪かきは危険ですので、業者に依頼するか気温が上がって自然に溶け落ちるのを待ちましょう。雪が特に多い地域では、パネルの傾斜を大きくしたり、融雪装置を付けたりなど、対策をとることもできますので設置する際は相談してみてください。
変動要因5. 天災
台風・地震・大雪など、自然災害により太陽光発電システムが破損してしまうことがあります。見た目には分からなくても、電気系統が落雷の影響でダメージを受けることも。災害を避けるのは難しいですが、備えることはできます。
雪に強い設置方法や、定期メンテナンスでボルトの緩みを確認してもらいましょう。また、自然災害保証に加入できるメーカーや施工会社を選ぶことで、修理代を軽減できます。
変動要因6. 経年劣化
太陽光パネルは、屋根の上で雨風にさらされるため、経年劣化は避けられません。20年後には出力が85~90%まで下がる可能性もあります。
多結晶シリコンは5年間で2.3~2.8%、単結晶シリコンではが3.2~3.9%程度、出力が低下するといわれています。CIS太陽電池は、2年目に出力が一旦アップする「光照射効果」と呼ばれる現象が起きます。5年後の低下率は1.4~1.5%ですが、その後の低下率は単結晶シリコンよりも早まります。
変動要因7. ソーラーパネルの汚れ
砂や埃がパネルに溜まると、発電効率が落ちてしまうので定期的に清掃を行いましょう。
落ち葉や鳥の糞などで汚れて、一部分だけ発電できない状況が長期間続くと、その部分が発熱してしまいます。この現象は「ホットスポット」といい、発電量が低下するだけでなく、モジュールの故障や発火の原因となります。
屋根の上の清掃作業は危険ですので、専門業者に依頼するのがおすすめです。
太陽光発電の発電効率をアップする方法
ここまでの低下要因を踏まえて、発電効率をアップする方法をまとめると以下ようになります。
①発電効率が高いメーカーのソーラーパネルを選ぶ
パネルの素材やメーカーの技術によって、発電効率が異なります。長期間の使用を見越して、耐久性についても比較するようにしてください。カタログやメーカーのホームページで確認可能です。
②適切な設置場所を選ぶ
日光ができるだけ長時間当たる場所を選びましょう。影がかかる場所は避けてください。
③定期的なメンテナンスを行う
併せて清掃を行うと、さらに効果的です。日頃から発電量の推移を確認しておき、調子が悪いと感じたら施工会社などに連絡しましょう。
まとめ
ここまで、太陽光発電の発電効率についてまとめました。
太陽光発電の発電効率とは、光エネルギーを電気エネルギーにどれくらい変換できるかの値で、変換効率とも呼ばれます。同サイズのパネルの場合、この値が大きいほど発電量が多くなります。
メーカーやパネルの素材によって発電効率は異なるので、自分のニーズに合わせて選んでください。
また、太陽光発電の発電効率は、他の再生可能エネルギーより高いとは言えません。しかし、初期費用や設置場所を考えると、再エネの中では費用対効果が最も良い発電方法といえるでしょう。
適切な設置場所を選ぶと、発電効率がアップします。運用していくうちに低下することもありますが、定期的なメンテナンスを行うことである程度防ぐことが可能です。ぜひ太陽光発電導入の参考にしてみてください。
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