昨今消費者のなかでも環境意識の高い人が増えてきており、再生可能エネルギーが注目を集めています。
再生可能エネルギーにはいくつかの種類がありますが、そのなかでもバイオマス発電について知っている人は少ないのではないでしょうか。太陽光発電・風力発電などに比べ、バイオマス発電にはあまり馴染みがなくイメージがしづらいと思います。
そこでこちらの記事では、バイオマス発電の歴史や日本の全発電電力量に占める割合、そしてメリット・デメリットに問題点・将来性・FITとの関係などについて詳しく解説します。
環境にやさしい電気を使いたいと考えている人は、ぜひバイオマス発電の知識も身に付けておきましょう。
バイオマス発電とは?歴史や割合なども紹介!
ここでは再生可能エネルギーの一種であるバイオマス発電について、その歴史や日本の全発電電力量に占める割合について説明します。
バイオマス発電の歴史
日本におけるバイオマス発電に関連する政策として、最初に打ち出されたのが2002年に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」です。
その後2005年閣議決定の京都議定書目標達成計画や、2008年閣議決定のバイオ燃料技術革新計画を経て、2009年6月にはバイオマス活用推進基本法が制定されました。
そして最近では2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が開始しましたが、このFITによってバイオマス発電の普及率は急速に高まります。
バイオマス発電の割合
2020年のバイオマス発電の年間発電電力量は、日本の全発電電力量の3.2%であり、普及率はそこまで高くありません。
再生可能エネルギーのなかでは、近年急速に普及が進んでいる太陽光発電が8.5%、日本で昔からおこなわれている水力発電が7.9%と、全発電電力量のうちで多くの割合を占めているのが現状なのです。
ちなみにその他の再生可能エネルギーのなかで日本でおこなわれているものに地熱発電・風力発電などもありますが、全体に占める割合は1%以下でバイオマス発電よりも普及が進んでいません。
※参照元:NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク「FITバイオマス発電をめぐる制度の変更と課題」
バイオマス発電の仕組み|発電方法の種類は?
バイオマスとは動植物や廃棄物などから生まれた再生可能資源のことですが、バイオマス発電はこのバイオマス燃料を燃やしたときに発生する蒸気やガスの力でタービンを回す仕組みの発電方法です。
再生可能エネルギーの一種ではありますが、太陽光や風力といった限りがない資源を使う発電方法とは違い、バイオマス発電は動植物や廃棄物といった燃料を必要とします。
バイオマス発電は、発電方法の仕組みによって以下のような3つの種類に分けられます。
・直接燃焼方式
・熱分解ガス化方式
・生物化学的ガス化方式
それぞれの種類の仕組みについて、順番に解説していきます。
発電方法1. 直接燃焼方式
直接燃焼方式は一般的な火力発電と同様に、木材などを燃焼させることで蒸気を発生させ、その水蒸気を利用してタービンを回す仕組みの発電方法です。
原料を選ばずシンプルな設備で発電できますが、他の方法に比べて温度が上がりづらく、大型の設備でないとエネルギー変換効率が悪くなるというデメリットがあります。
また大型の設備を使うと大量の木材を燃焼するため、木材を調達・運搬するコストが多くかかる点も課題といえるでしょう。
発電方法2. 熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式は、木材などを蒸し焼きにした際に発生する「熱分解ガス」を使ってタービンを回す仕組みの発電方法です。
直接燃焼方式は木材を燃焼した際に発生する蒸気を利用する仕組みである一方、熱分解ガス化方式は木材を蒸し焼きにした際の熱分解ガスを利用する仕組みであるという点に違いがあります。
熱分解ガス化方式は燃焼温度が高いため直接燃焼方式よりもエネルギー変換効率がよく、小さな発電所でもおこなえるというのがメリットです。
発電方法3. 生物化学的ガス化方式
生物化学的ガス化方式は、下水汚泥や家畜の糞尿を発酵させ、バイオガスを発生させてタービンを回す仕組みの発電方法です。発生するガスの発熱量が高いため、エネルギー変換効率がよい仕組みであることが生物化学的ガス化方式の特徴。
また下水汚泥や家畜の糞尿といった廃棄物を有効活用できるといった点でも期待されている発電方法です。
バイオマス発電のメリット・デメリット
バイオマス発電にも他の再生可能エネルギーと同じように、メリット・デメリットがそれぞれあります。
ここではバイオマス発電のメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。
バイオマス発電のメリット6つ|どんな利点がある?
バイオマス発電には、以下のようなメリットがあります。
・CO2(二酸化炭素)の排出量削減|カーボンニュートラル
・安定して発電することができる
・廃棄物を有効活用できる
・発電時の熱も利用できる
・既存の発電設備を利用できる
・燃料資源を国内で確保できる
以上6つのメリットについて、順番に解説します。
メリット1. CO2(二酸化炭素)の排出量削減|カーボンニュートラル
バイオマス発電では燃料の燃焼時に二酸化炭素を排出しますが、木材をはじめとした植物由来の燃料は光合成により排出したのと同量の二酸化炭素を吸収しているため、大気中に排出される二酸化炭素の総量は増加しません。
このような仕組みを「カーボンニュートラル」といいます。バイオマス発電はこのカーボンニュートラルにより、二酸化炭素の排出量削減に貢献できるのです。
この点は他の再生可能エネルギーのように、そもそも二酸化炭素を排出しない発電方法とは違う考え方の再生可能エネルギーといえるでしょう。
メリット2. 安定して発電することができる
バイオマス発電は自然界に存在するエネルギーを利用した再生可能エネルギーの一種ですが、他の再生可能エネルギーのように天候などによって発電量が左右されることはありません。そのため燃料となる木材や食品廃棄物を供給することさえできれば、安定した発電が可能です。
自然の力を使って発電をする再生可能エネルギーは電力供給が不安定になりがちなので、安定供給をできるのはバイオマス発電ならではのメリットといえるでしょう。
メリット3. 廃棄物を有効活用できる
バイオマス発電に使用される廃棄物や家畜の糞尿などは、本来処分されるものです。しかしバイオマス発電はこれらの廃棄物・家畜の糞尿などを燃料に電気をつくることができるので、廃棄物を有効活用し、発生する生物系廃棄物の量を削減することができます。
単に自然界に存在するエネルギーを活用するだけでなく、廃棄物を有効活用することができるというのは再生可能エネルギーのなかでもバイオマス発電ならではのメリットといえるでしょう。
メリット4. 発電時の熱も利用できる
バイオマス発電は木材を燃焼させることで生じた水蒸気を利用して発電する仕組みですが、その過程で発生する熱を様々なものに利用することができます。
たとえばプールや浴室の温水の主熱源として使われたり、給湯・暖房等に活用するといった方法です。実際に全国各地でこのような取り組みがおこなわれており、バイオマス発電の際に発生する熱はさまざまなものに活用されているのです。
メリット5. 既存の発電設備を利用できる
バイオマス発電と火力発電は燃料に違いがありますが、2つの発電方法はよく似ています。そのため既存の火力発電所を利用してバイオマス発電を行うこともできるのです。
風力発電・水力発電などの再生可能エネルギーは、設備を建設するのに多額の費用が掛かる点が大きな難点。なので既存の設備を使用して簡単に再生可能エネルギーを作ることができるのは、バイオマス発電の大きなメリットといえるでしょう。
メリット6. 燃料資源を国内で確保できる
バイオマス発電は木材を燃焼したり蒸し焼きにしたりすることで発電する仕組みなので、燃料資源を国内で確保することができます。バイオマス発電を活用すれば、資源を輸入することなく発電をおこなえるのです。
近年では国産材の消費量が落ち込んでおり、林業の衰退や山林の荒廃などが問題視されていますが、バイオマス発電が普及すれば林業が再興して地方活性化にもつながるでしょう。
バイオマス発電のデメリット4つ|どんな欠点がある?
バイオマス発電には多くのメリットがある一方、以下のようにいくつかのデメリットもあります。
・発電コストが高い
・燃料資源の調達が必要
・発電効率が低い
・食料も資源にする可能性がある
以上4つのデメリットについて、それぞれ解説します。
デメリット1. 発電コストが高い
バイオマス発電には燃料として木材が使用されますが、山林から伐採した木材を運搬して管理し発電所へ輸送するまでには、大きなコストがかかります。
そのため木材自体の価格はそれほど高くなかったとしても、このような木材の運搬・管理・輸送の費用を含めるとコストがかさんでしまうというのがデメリット。
他社との連携や運搬過程を短くするなど、いかにしてコストを減らすかということがバイオマス発電をするうえでの課題といえるでしょう。
デメリット2. 燃料資源の調達が必要
バイオマス発電には木材が燃料として使われるため、太陽光や風力とは違い有限の資源を使用しなければなりません。そのためバイオマス発電では燃料資源の調達が必要です。
木材はバイオマス発電だけに用いられる資源ではなく、建設や家具、紙といった様々なものに使用されます。なので他産業との木材資源の配分を調整しなければならず、資源の調達も簡単ではないという課題があるのです。
デメリット3. 発電効率が低い
バイオマス発電のエネルギー変換効率は20~25%程度であり、他の発電方法に比べて発電効率が低いというデメリットがあります。再生可能エネルギーのなかでもっとも発電効率が高いのは水力発電で、エネルギー変換効率は約80%。
その他の再生可能エネルギーをみても、風力発電・太陽光発電でエネルギー変換効率は20~40%程度になっています。このように他の再生可能エネルギーと比べ、発電効率が低いというのはバイオマス発電の課題といえるでしょう。
デメリット4. 食料も資源にする可能性がある
バイオマス発電が将来的に普及することで、食料の既存用途と競合する可能性があることも課題の一つです。
たとえばバイオマス発電の燃料の一つとしてトウモロコシのような作物が用いられますが、トウモロコシはバイオマス発電以外にも食料・飼料といった用途にも用いられます。
このように食料も資源にする可能性があるバイオマス発電は、他の再生可能エネルギーにはないデメリットがあるのです。
バイオマス発電の問題点と将来性
バイオマス発電には二酸化炭素排出抑制や廃棄物の有効活用といった多くのメリットがある反面、資源が小規模分散型であることからコスト面などの問題点があります。
またバイオマス発電においてもFITが適用されますが、FITを適用するうえでもコストの高さや小規模分散型であることなどが課題といえるでしょう。
もっとも最近ではこの小規模分散型であるという特性を活かし、地産地消型の発電方法としてバイオマス発電が活用されています。今後さらなる技術開発や政策によって問題点を解決していくことで、バイオマス発電の将来性に期待したいところです。
バイオマス発電の割合が比較的高いエコな新電力会社
バイオマス発電の割合が高い、エコな新電力会社をいくつか紹介します。
イーレックスはバイオマス専焼の発電所を2013年から稼働しており、バイオマス発電の開発を積極的に進めている新電力会社です。
今後も発電所の拡充やバイオマス燃料の調達先の開拓、そして海外の供給元を調査・選定することで安定供給を実現するなど、バイオマス発電により一層力を入れていきます。
またシンエナジーは複数のバイオマス発電所を保有しているほか、三洋貿易株式会社と提携して「小型高効率バイオマス発電システム」の販売拡大・導入促進にも力を入れる電力会社です。
その他にもグリーナでんきなどが再生可能エネルギーを活用した二酸化炭素排出量の少ない電気を積極的に取り入れています。バイオマス発電に力を入れている新電力会社を選ぶときは、電源構成に着目して選んでみてください。
まとめ
バイオマス発電は現状そこまで普及率が高くありませんが、FIT制度の導入によって普及率は拡大しました。バイオマス発電には二酸化炭素排出量の削減効果があり、廃棄物を有効活用して安全性の高い再生可能エネルギーを生産することができます。
ただし発電コストの高さや発電効率が低い点などが、バイオマス発電を普及していくうえで今後の課題となるでしょう。
FITを活用することで、今後さらにバイオマス発電の普及拡大が期待されます。バイオマス発電に興味が沸いたら、ぜひこちらで紹介したバイオマス発電の割合が比較的高いエコな新電力会社をチェックしてみてください。
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