今やインターネット回線には、さまざまな種類があります。一昔前から使われている、「ADSL」もインターネット回線の1つです。光回線が普及した現在ではその数が減少傾向にあるものの、いまだにADSLのサービス自体は提供されています。
しかし、光回線が主流になる現在、ADSLと光回線の詳しい違いとは何かがよく分からない人も多いでしょう。そこでこの記事ではADSLとは何か、その特徴をわかりやすく解説します。
今までADSLという言葉の意味があいまいだった人は、ぜひこの記事を読めばADSLがどんな仕組みなのか把握できます。また、サービスがいつまで提供されるのかも必見です。
ADSLとは?仕組みや特徴などをわかりやすく解説
まずは、ADSLとは何かわかりやすく解説していきます。仕組みや種類、ADSLの歴史など、意外と知られていない特徴について見ていきましょう。
「よく分からないまま契約している」という方は特に、必見の内容です。
ADSLとは?仕組みを簡単に解説
ADSLの仕組みをわかりやすくいうと、「電話回線を通してインターネットに接続する通信技術」です。
すでに家庭内へ引き込まれている電話線を通してインターネット通信をおこなうため、電話線とつなげる「スプリッタ」、そしてパソコンなどの通信機器とつなげる「モデム」が必要となります。
スプリッタとは、コンセントに接続することで電話回線をデータ通信用の帯域と音声通話用の帯域に分けるための装置です。電話回線を使うADSL独特の通信装置で、スプリッターがあることで音声通話に邪魔されない高速のデータ通信が実現しています。
なお、一昔前では電話のある家でのみ契約できる通信方法でしたが、近年では固定電話のない家でもADSLを契約できます。固定電話のある家よりもやや値段の高いプランにはなりますが、手軽にインターネット通信ができて非常に魅力的です。
また、ADSLの契約は別途「プロバイダー」と呼ばれる業者との契約が必要となります。BIGLOBEなどがその一例です。
ADSLの種類
ADSLには、2つの回線タイプがあります。
1つは家の固定電話やファックスの回線を使って、インターネット接続するというタイプです。もう1つは、家の固定電話やファックスとは別に、NTTの基地局からADSL専用回線を引くタイプです。
既存の回線を使わないため工事は必要になりますが、回線が混み合うリスクが少なく済む上にADSLでIP電話も使えます。なお、どちらもNTT基地局から回線を引いていることに変わりはありません。
ADSLの歴史
ADSLは、1999年に初めて国内で商用提供されるようになりました。その後、2001年にYahoo!JAPANがADSL事業に参入。2002年には数多くの企業がADSLの回線速度を速める動きが激化し、国内にADSLが普及していきました。
そして通信速度、最大45Mbpsを達成したところでADSLの勢いは収束。2004年をピークにして、2005年にはADSLに代わり「FTTH」という通信技術が主流となっていきました。
FTTHとは、電話回線でなく光ファイバー回線を使った通信方法のことです。光ファイバーケーブルを家の中に引き込む工事を行うことで、NTT基地局からの距離に関わらず高速の通信が実現できるようになりました。
ADSLのメリット3つ
ADSLにはADSLのメリットがあります。需要が減りつつある今でも、それは変わりません。
そこで、ここからは「ADSLのメリットとは」という点についてわかりやすく解説していきます。光回線とは何が違うのか、ADSLならではのメリットに注目です。
メリット① 光回線と比較して料金が安い
現在、国内で主流となっているのは光回線です。光回線を使うには、「開通工事」といって回線の引き込みを行う工事が別途必要です。また、アンテナの役割を果たす機械の設置も欠かせません。こうしたことから、光回線は基本料金が高いという特徴があります。
一方、ADSLは既存の電話線を使えるため、回線を引き込む工事は必要ありません。機器を設置し、正しく接続するだけです。そのため価格設定も安く、光回線よりリーズナブルに使えます。
メリット② 供給エリアが広い
ADSLは光回線に比べて、供給エリアが広いのも特徴です。ADSLの接続に使う電話線は、基本的に全国どこでも通っています。しかし、一方で光回線は専用の光ケーブルから線を引き込まなければなりません。
光ケーブルの普及率は、2019年3月末時点で全国の7割程度。つまり、全国のうち3割は光回線が繋がらない環境にあるということです。山間部などの地方では特にこうしたデメリットがありますが、ADSLなら使える可能性があります。
メリット③ 開通工事がラク
ADSLは基本的に、固定電話やファックスがあればその回線を使って接続できます。
そのため、電線から専用の回線を引いてくるといった、大がかりな開通工事が必要ありません。スプリッタとモデムをきちんと接続さえすればすぐ使えるようになるため、手間がかからず非常にラクです。
「工事日程を待たず、すぐにインターネットを使いたい」という方にとっても便利な通信技術といえるでしょう。なお、光回線には光ケーブルから回線を引く工事が別途必要となり、工事費もかかります。
ADSLのデメリット5つ
ADSLは当時メリットの多い画期的な通信技術として受け入れられましたが、時代を経るごとにデメリットが目立つようになってしまいました。では、ADSLのデメリットとは一体何なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
デメリット①回線速度が遅い
ADSLは、光回線に比べて圧倒的に通信速度が遅いというデメリットがあります。
たとえばADSLには下り最大12Mbpsのプランがありますが、近年の光回線はMbpsどころか「Gbps」の速度が出ます。1Gbpsは、1Mbpsの約1,000倍です。つまり、ADSLと光回線では速度のケタからまったく違うということになります。
調べ物だけでなく動画ストリーミングや音楽再生、ゲームなどさまざまなシーンでインターネットを使う現代において、回線速度が遅いのは非常に不便です。
デメリット②基地局からの距離が遠いと遅い
ADSLの最大通信速度は、光回線よりも圧倒的に遅いとご説明しました。しかしどんな回線にしても、最大速度を常に出し続けられるわけではありません。
最大速度より通信速度が下がることもあり、ADSLの場合はそれがNTTの基地局から遠い場合です。ADSLは基地局から距離があればあるほど通信速度は遅くなります。
1km圏内に基地局があれば日常生活にそこまで大きな支障はないようですが、容量の大きい動画再生を頻繁に行う人や在宅ワークでパソコンを常に開いている人などは特に、通信速度が少し遅いだけでもストレスを感じてしまうでしょう。
デメリット③ひかり電話が使えず料金が高い
ADSLは、光回線よりも電話料金が高くなるというデメリットがあります。ADSLでは従来のNTTの加入電話を使うのに対し、光回線を契約するとひかり電話が使えるようになります。
ひかり電話は従来の電話と違い、音声を通信するのに交換局を経由しません。つまりインターネット回線を利用して、音声をデータ化したものを送信するため、交換局を経由しない分基本料金が安く抑えられるのです。
現在では国内で6割以上の人が光回線に切り替えています。
デメリット④トラブルが起きやすい
ADSL通信を現在も使っている人は、光回線に比べて通信トラブルに見舞われやすいといえるでしょう。なぜなら、ADSLは20年以上も前からあり、なおかつ現在はシェアが低くなっているため、通信ケーブル自体も古くなっている可能性があるからです。
古いケーブルは通信トラブルのリスクが高く、ちょっとしたことでも損傷する可能性があります。現在主流となっている光回線の光ケーブルは、新しいだけでなくしっかりとメンテナンスも行なわれているため通信トラブルのリスクは低いでしょう。
デメリット⑤2024年3月末でサービス終了
現在、ADSL契約を提供しているのは主にYahoo! BBとフレッツの2社で、いずれも将来的にサービスを終了することが分かっています。
サービス終了時期は、以下の通りです。
Yahoo!BB ADSL | 2024年3月末にサービス終了 |
フレッツ ADSL | 2023年1月31日にサービス終了 |
いずれもあと数年の猶予があるものの、現在契約中の方は忘れないうちに解約し、光回線への乗り換えを済ませておくことをおすすめします。また、終了時期について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ADSLの新規申し込み終了|各社の終了時期
Yahoo! BBとフレッツの2社は2021年現在時点ですでに新規の申し込みを締め切っています。そのため、今はADSLに申し込むことができません。
なお、申込終了時期はYahoo! BBが2016年6月30日、フレッツが2019年2月28日でした。光回線に申し込む以外にも、ポケットWi-Fiやホームルーターを購入することで、工事不要でインターネットが使えるようになります。お急ぎの方は、ぜひお試しください。
まとめ:ADSLから光回線への乗り換えがおすすめ
ADSLとは何か、そしてメリットやデメリットについてご紹介しました。ADSLは2000年初頭に高いシェアを誇った通信技術です。しかし現在は光回線が主流となっており、ADSLのサービスは順次終了することが分かっています。
現在ADSLを契約中の方はホームルーターを用意する、または光回線を契約するなどして、早めに回線を乗り換えましょう。光回線の開通工事には日程調整等で時間がかかるため、早めのお手続きをおすすめします。
